モータやギヤボックスの出力軸は、形状により特徴が異なり、締結方法も異なってきます。用途に合った軸形状と締結方法や締結用部品を選ぶことは、設計する上で大切な要素になります。
この記事では、つぎの3種類の軸形状との締結方法について説明します。
締結用部品についても、次の2つを紹介しています。
Dカット軸は、ギヤボックスの標準的な出力軸形状です。特別な設計要件や規格はありませんので、軸に対してどのような加工がされているかを確認する必要があります。軸の両側にDカットが加工された、ダブルDカット軸などもあります。
締結方法には、ネジ締結、クランプ締結、面圧締結、ピン締結などがあります。
次のようにネジでDカット軸の平面部を押さえつけて締結する、最も一般的な締結方法です。セットスクリューとも呼ばれ、イモネジを用いた締結もよく使われます。
次のように加工した部品でDカット軸を挟み、ネジで締め付けます。Dカット軸クランプ締結は、特殊な工作機械(ワイヤー放電加工機など)で加工する必要がありますが、設計を工夫すればボール盤とのこ盤でも加工できます。クランプ締結では、強固な締結が可能です。
次のようなクランプでDカット軸を挟み、ネジで締め付けます。面圧締結はDカット軸よりも丸軸のほうが締結力が高くなります。しかし、強力な負荷がかからなければDカット軸でも十分な締結力がありますが、ガタつくことがあるため十分確認が必要です。また、キーレスブッシングを使用した面圧締結方法もあります。
次のように軸に穴をあけてピンを圧入して締結を行います。穴をあけた部分の軸強度が低下し、応力集中が発生することに注意が必要です。加工精度が悪いと締結できなくなります。
特別な理由がない限り、自分で穴を開けてピン締結する方法は推奨しません。
Dカット軸と比べて、面圧による締結力が高く、ネジによる締結力が低いといった特徴があります。締結方法は、Dカット軸と同じく、面圧締結、ネジ締結、ピン締結がよく使われます。
また、丸軸は自由に追加工できる軸で、さまざまな設計要件に対応できます。加工によりDカット軸やキー溝軸の寸法を自由に決めることができます。
次のようなクランプで丸軸を挟み、ネジで締め付けます。面圧締結は、丸軸では締結力が高くおすすめです。キーレスブッシングを使用した面圧締結方法もあります。
キー溝軸は、他の軸形状に比べ、非常に締結力が高い軸です。出力軸に高トルクが発生する場合に使用します。使用する時には、キー寸法の確認が必要となりますが、キー寸法はJISで標準規格が定義されていて、軸径が決まるとキー寸法が決まります。(キー溝寸法 《日本工業規格 JIS B 1301:1996》)
キー溝加工には、特殊な工作機(ブローチ盤やスロッター、ワイヤー放電加工機など)が必要になります。標準規格があるため、キー溝加工がされた軸継手や歯車などを多く販売されています。軸径に対して異なる規格のキー寸法で加工されている場合があるため、キー寸法は確認しましょう。
締結方法は、ネジ、クランプなどでキーを固定するキー溝締結になります。
次のようにキー溝にキーを差し込み、キーを固定するためネジで締め付けます。
次のようにキー溝にキーを差し込み、クランプで締め付けます。
軸形状 | 推奨締結方法 | 選定基準 |
---|---|---|
Dカット軸 | ・ネジ締結 ・Dカット軸クランプ締結 | ・標準的な形状 ・特別な設計要件がない時 |
丸軸 | ・面圧締結 | ・面圧締結で強力な締結を行いたい場合 ・設計に合わせて自由に軸加工を行いたい時 |
キー溝軸 | ・キー溝締結 | ・高負荷がかかる場合 |
軸と軸を締結する部品です。モータ軸を延長したいときや、モータ軸の加工を行いたくないときに使用します。ネジ締結、面圧締結、キー締結などさまざまな締結方法を選べます。
カップリングには種類(リジット形、オルダム形など)があり、機能や許容トルクなどから設計に適したものを選定してください。
カップリングについて詳しく知りたい方は、ミスミのサイト(外部サイト)がおすすめです。
軸と歯車などの機械要素を直接締結する部品です。面圧締結を行う部品で、締結、分解が簡単です。製造メーカにより、メカロック、パワーロックなどの名称があります。